社会や音楽etcについて
少子高齢化が話題となっている。地方、特に交通不便な僻地では深刻な状況である。最近「消滅集落」という刺激的な言葉が登場し、話題となっている。他方、現在の少子高齢化は突然到来したように思われているが実はそうではない。
私は1962年に東京工業大学に入学した。その当時、新入生は数十人毎にクラス分けされ、それぞれのクラスに担任教員が配置された。私の場合、担任は経済学の阿部教授であった。この関係で、阿部教授から経済学の講義を受けた。
大学で受けた講義の内容の多くは記憶に残っていない。しかし、阿部教授が指摘された幾つかの要点は今でも鮮明に思い出すことができる。その一つは、「君達が年をとったときの日本は老人が多数の社会になっている」との予測である。教授は、「そうした時代のデパートにはベビー用品コーナーの代わりに老人向けコーナーが賑わっているであろう。」と述べていた。
阿部教授が出生数の減少をはっきりと言及された記憶はないが、高齢者が人口構成の重要な部分を占めることを解説された。少子高齢化という言葉は当時なかったけれども、教授の講義内容は少子高齢化社会の未来予測に相当すると思う。
私の数年下に戦後のベビーブーム時代に生まれた世代がおり、彼らが団塊の世代として高齢者の集団を形成している。だが、人口の年齢別分布(図1)を眺めると、私の世代(1943年生まれ)も団塊世代のピークに入り、その先頭部分を占めている。
図1 日本の人口の年齢分布 (2013.10) 総務省統計局 統計表e-Statより http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2013np/index.htm |
人は誰もが毎年一つずつ年を取ることは自明である。戦後のベビーブームが起きれば、団塊の世代という特異な状態が発生することを未来予測することは簡単であったはずなのに、何故か社会制度の対応が遅れたと言うか、されないままに来てしまった。
阿部教授は少子高齢化に加えて、将来の日本社会にとって重要なキイワードとして、「エネルギー」、「水」、「食料」を挙げていた。私は、この歳になって改めて阿部教授の慧眼に感嘆する。素晴らしい先生に出会っていたことに感謝し、その事実を学生時代にしっかり認識することができなかったことを恥じる。東京工業大学では、「エネルギー」に関与する専攻に在職したことで、教授の教えにほんの少しだけ応えることができたと思う。